2008/06/17

床屋



ぼくの行っている床屋さんは、幼なじみの美穂ちゃんの家だ。
おばさんが一人で理容室を経営している。

午後6時、待合席で週刊誌を読んでいた。
「告白・人妻の性/白昼の出来事」というモノクロページは、
13歳のぼくには十分興奮する内容だった。

「おまたせ。」
びっくりして顔を上げると、おばさんは
店のドアのカーテンを閉めながら言った。
「今日は、よっちゃんが最後のお客さんだよ。」

一通り髪を切り終えたところで、おばさんが急に聞いてきた。
「よっちゃん、マスターベーションとかしてるの?」
ぼくがビックリして何も答えられないでいると、おばさんは、
「じゃあ、頭洗おうか。」
と言って、お客が座ったまま頭を洗えるシンクのようなものを引き出した。

下を向いて、おばさんに頭を洗ってもらっている間、
さっき読んだ週刊誌の記事とおばさんの質問が頭を交互に支配していた。

「はい、おしまい。」

立ち上がって、服についた髪の毛を払ってもらっている時に聞いてみた。
「今日、美穂ちゃんは?」
「美穂は友達の家に泊まりに行っちゃってね。」
数秒の沈黙の後、思い切って聞いてみた。
「おばさん、マスターベーションとかしてるんですか?」

(終)